自動車整備工場における危険物の取扱いについて解説

自動車整備工場建設

危険物は消防法により6つの類別に分類されており、それぞれが異なる性質と危険性を持っています。自動車整備工場では、これらのうち特に第4類に分類される引火性液体を日常的に取り扱います。ガソリンやオイル、各種の溶剤など、整備作業に不可欠なこれらの物質は、適切な管理がなければ重大な事故につながる危険性を持っています。今回は、自動車整備工場で使用頻度が高く、事故の発生も多い第4類危険物に絞り、安全な施設づくりのための重要なポイントを解説します。

自動車整備工場において、燃料、オイル、溶剤などの第4類危険物は業務に不可欠な存在です。これらの引火性液体は、適切な管理を怠ると火災や爆発などの重大な事故につながる可能性があります。2023年度の消防庁の統計によると、自動車関連施設での危険物に起因する事故の大半が第4類危険物によるものであり、予防が極めて重要な課題となっています。

第4類危険物とは

第4類危険物は引火性液体に分類され、自動車整備工場では主にガソリン、軽油、エンジンオイル、ブレーキクリーナーなどが該当します。これらの物質は、その引火点や性状により、さらに以下のように分類されています。

区分品名例引火点指定数量主な用途
特殊引火物ジエチルエーテル-40℃以下50L始動液
第1石油類ガソリン、ベンジン21℃未満200L燃料、洗浄剤
第2石油類軽油、灯油21℃以上70℃未満1,000L燃料
第3石油類重油、クレオソート油70℃以上200℃未満2,000L機械油
第4石油類ギヤオイル、エンジンオイル200℃以上6,000L潤滑油
動植物油類べジタブルオイル250℃未満10,000Lバイオディーゼル

法規制と必要な措置

消防法では、第4類危険物の貯蔵・取扱いについて厳格な規制が定められています。指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う場合は「危険物製造所等」の設置許可が必要となります。この許可申請には、消防法、建築基準法などの関連法規に基づく詳細な書類の提出が求められます。

設置許可申請における主な確認事項として、施設の位置・構造・設備の技術基準への適合性があります。具体的には、保有空地の確保、建築物の構造、消火設備、警報設備、避難設備などが対象となります。保有空地とは、火災の際に炎症を防ぐための周囲の構造物との空間のことを指します。さらに、危険物取扱者の選任や予防規程の作成など、ソフト面での対応も必要です。

保管場所の設計と構造

保管場所の設計では、まず位置の選定が重要です。敷地境界線からの距離、他の建築物との離隔距離、さらに避難経路の確保などを考慮する必要があります。建築物の構造については、耐火構造または準耐火構造とし、延焼を防止するための措置を講じます。

項目必要な措置備考
保有空地指定数量の倍数に応じ3〜10m周囲の状況により緩和可
床面積1,000㎡以下/区画防火区画による制限
採光・照明外光20cm²/㎡以上防爆型照明器具の使用
換気10㎥/h・㎡以上強制換気設備の設置

施設設備の具体的要件

床面については、危険物が浸透しない構造とし、適切な傾斜と貯留設備を設ける必要があります。また、施設内での静電気対策として、接地設備の設置や導電性の床材の使用も重要です。貯蔵タンクや配管設備には、材質の選定から継手の構造まで、細かな技術基準が設けられています。

消火設備については、第4類危険物の性質を考慮し、泡消火設備や粉末消火設備などを適切に選定します。警報設備としては、自動火災報知設備に加え、漏洩検知器やガス警報器の設置も必要です。

作業環境の整備

作業環境の整備では、換気システムが特に重要です。第4類危険物は揮発性が高く、その蒸気は空気より重いため、床面付近での滞留が起こりやすいという特徴があります。そのため、床面近くに吸気口を、天井近くに排気口を設置するなど、効果的な換気計画が必要です。

作業場の照明や電気設備は、防爆構造のものを使用します。特に危険物を取り扱う場所の周囲5m以内では、第2類危険箇所として、より厳格な防爆基準が適用されます。また、静電気対策として、作業者の帯電防止措置も必要です。

計画的なメンテナンス

施設の新設・改修には相応の投資が必要となりますが、計画的な実施により、コストの最適化が可能です。これらの設備は、定期的な点検と適切な維持管理が必要です。年間の維持管理費用には、一般的に設備投資額の3~5%程度を見込む必要があります。これには、法定点検、設備の保守管理などが含まれます。

事故防止と安全管理

第4類危険物による事故を防止するためには、設備面での対策に加え、作業手順の標準化や従業員教育が重要です。特に注意すべき作業として、危険物の受け入れ、小分け作業、そして廃油の処理があります。これらの作業では、静電気対策、換気の確保、保護具の着用など、基本的な安全対策を確実に実施する必要があります。

尾瀬開発では、設計段階からの技術相談や、許認可申請のサポート、さらには完成後の保守管理に至るまで、一貫したサービスを提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。

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