※記事内の料金等は執筆時点(2023年11月)の数字となります。
動力電源ってなに?
電力会社との契約は、電力の大きさによって低圧・高圧・特別高圧に分類されます。本記事ではこれらのうち、低圧電力について解説します。低圧電力は直流では750V以下、交流では600V以下で、受電電圧が200V以下のものを指します。
低圧電力の契約には「電灯契約」と「動力契約」があり、電灯契約は一般家庭向けのものとなります。動力契約は小規模の店舗や工場向けのもので、主に大型のエアコンや冷蔵庫、工作機械やエレベーターを動かすための電力として供給されます。
一般家庭では主に4.0kW以上のエアコンやIHヒーター、最近では電気自動車の充電設備等に使用されています。
動力プランの特徴
動力電源の最大の特徴は、使用量あたりの電気料金の安さです。動力プランでは夏季(7月1日〜9月30日)とそれ以外(10月1日~6月30日)で料金が異なり、夏季以外は1~2円ほど安くなります。
例えば東京電力管内の場合、電灯プランであれば1kWhあたり30円~40円程度ですが、動力プランでは夏季は1kWhあたり27円前後、夏季以外は25円台と、安めに設定されています。1kWhで比べればわずかな差ですが、電気の使用量が多い自動車整備工場では無視のできない違いになってきます。
一方で、基本料金はやや高くなります。動力プランの基本料金は(基本料金 × 契約電力)の計算式を適用します。動力プランの基本料金は1,081円前後なので、電灯プランが月額350円程度から利用できることを考えると割高であることは否めません。
しかし、動力プランを契約するような状況では電気の使用量が多くなることが想定されるため、基本料金の違いはあまり考慮する必要はありません。
力率割引
動力プランのもう一つの大きな特徴は「力率割引」です。「力率」は聞きなれない言葉かもしれませんが、これは電力会社から送出された電力(皮相電力)のうち、実際に消費された電力(有効電力)の割合を示しています。
力率(%)= 実際に消費した電力(有効電力)/(電圧×電流(皮相電力)× 100
電力会社は消費電力に応じて料金を請求するため、力率が低くなれば無駄な電力を送出していることになります。そのため、力率の高い顧客には料金を割引き、逆に力率の低い顧客には割増料金を請求しています。
低圧電力契約の場合は力率85%を基準として、85%を上回れば基本料金から5%の割引き、85%を下回れば5%の割増となっています。
(例)基本料金1,081円/月、契約電力100kWの場合
契約電力 | 基本料金 | 割引・割増率 | 基本料金/月 | |
力率85%より高い | 100kW | 1,081円 | -5% | 102,695円 |
力率85% | 100kW | 1,081円 | ±0% | 108,100円 |
力率85%未満 | 100kW | 1,081円 | +5% | 113,505円 |
力率が85%より高い場合と力率が85%未満の場合を比べると、年間で約13万円の差額となります。
力率を改善して基本料金を節約
力率が高ければ基本料金の節約ができることがわかりました。では、力率を改善するためには何が必要なのでしょうか。
進相コンデンサの設置
モーターや溶接機など、主にコイルを使用した機器を使用する際、有効電流と無効電流が発生します。進相コンデンサはこのとき発生した無効電流と逆方向の電流を流すことによって無駄な電流を省きます。
進相コンデンサ設置のメリット
進相コンデンサを設置するメリットは、電気料金の節約だけではありません。力率が改善されれば少ない電流で機器を動作させることができるので、過剰なスペックの配線設備が不要になり、受電設備にも余裕が生まれます。また、電圧降下が起こりにくくなるため、コンプレッサーや溶接機などの安定動作が期待できます。
使用しない期間はメインブレーカーを落とす!
動力プランは、まったく使用しない月の基本料金を半額にすることができます。しかしながら、1kWでも使用してしまうとこの割引は受けられません。電気機器は使用しなくても微量の電気を消費するものがありますので、使用しない期間はしっかりとブレーカーを落としておきましょう。
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