ADASとは
ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems,先進運転支援機能)とは、自動車が周囲の状況に応じて、ドライバーに代わって自動車を制御するなどの運転支援を行う機能の総称です。
自動運転は、内容によって5段階のレベルに分類されています。レベル1,2が「運転支援」、レベル3以上が「自動運転」と定義されます。
- レベル1(運転支援)
システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施するもの。
(例)自動ブレーキ・レーンキープアシスト - レベル2(高度な運転支援)
システムが前後及び左右の車両制御を実施するもの。
(例)高速道路における自動追い越し・分合流 - レベル3(特定条件下における自動運転)
特定条件下においてシステムが運転を実施するもの。(作動継続が困難な場合、ドライバーへ介入要求が必要) - レベル4(特定条件下における完全自動運転)
特定条件下においてシステムが運転を実施するもの。(作動継続が困難な場合もシステムが対応) - レベル5(完全自動運転)
常にシステムが運転を実施するもの。
「自動車特定整備事業制度」の導入
2020年4月に施行された自動車特定整備事業制度によって、自動運転に関わる整備や改造が「特定整備」として新たに位置づけられ、2024年10月からは車検項目にも該当するようになります。
改正法の施行以前は、
国土交通省編 「道路運送車両法施行規則等の一部を改正する省令」
- 自動車の構造・装置に関する高度な知識・技術と整備のための設備・機器が必要であること
- 自動車の安全・環境性能に大きな影響を及ぼすこと
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001349701.pdf
上記の2点に該当する作業が「分解整備」として定義され、地方運輸局長の認証を受ける必要がありました。そのため、自動ブレーキのセンサーやカメラ等を「取り外さない」作業は認証を受けていない整備工場でも行うことができ、安全性が確保されていませんでした。
そこで導入されたのが自動車特定整備事業制度です。
自動車特定整備事業制度では「分解整備」の名称が「特定整備」に改められ、対象となる作業が「取り外しを伴わなくとも装置の作動に影響を及ぼす整備又は改造」に拡大されるとともに、対象装置として自動運転レベル3以上の自動運転を行う自動車に搭載される「自動運行装置」が追加されました。
以下の3つに該当するものは電子制御装置整備作業」と呼ばれ、特定整備の対象となります。
国土交通省編 「道路運送車両法施行規則等の一部を改正する省令」
- 衝突被害軽減制動制御装置(いわゆる自動ブレーキ)及び自動命令型操舵機能(いわゆるレーンキープアシスト)に用いられる、前方をセンシングするための単眼・複眼のカメラ、ミリ波レーダー及び赤外線レーザー等の取り外し又は機能調整等(ECUの機能調整を含む。)により行う自動車の整備又は改造。
- その後のECUの機能調整が必要となる①に用いられる単眼・複眼のカメラ、ミリ波レーダー及び赤外線レーザー等の取り付けられている車体前部(バンパ、グリル)、窓ガラスを脱着する行為。
- 自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001349701.pdf
さらに、一口にエーミング調整といっても、その方法により3種類に分類されています。
- 静的エーミング(特定整備の対象)
車両の前方にターゲットを設置し、スキャンツールを使用して調整を行うもの。 - 動的エーミング(特定整備の対象外)
指定された条件下で車両を走行させ、自動的に調整を行うもの(センサーやカメラを脱着・交換した場合は対象)。 - 自動エーミング(特定整備の対象外)
調整に特別な動作が必要なく、車両が自動で調整を行うもの(センサーやカメラを脱着・交換した場合は対象)。
認証に必要な要件
従来の分解整備のみを行う場合、認証基準と要件に変更はありません。一方で、電子制御装置整備のみ行う認証工場の場合は、対象とする車両に応じて指定されたスペースを確保する必要があります。分解整備と電子制御装置整備の両方を行う場合は、いずれの基準も満たしている必要があります。
対象とする車両 | エーミングに必要な 寸法(車両前部) (奥行×間口) | 電子制御装置点検整備作業場の基準 (奥行×間口) | (参考) 分解整備のみを行う作業場の基準 (奥行×間口) |
普通(大) | 5m×5m | 16m×5m (うち屋内7m×5m) | 屋内 13m×5m |
普通(中) | 5m×指定無し | 13m×3m (うち屋内7m×3m) | 屋内 10m×5m |
普通(小) | 1m×2m | 7m×2.5m (うち屋内3m×2.5m) | 屋内 8m×4.5m |
普通(乗) | 1m×2m | 6m×2.5m (うち屋内3m×2.5m) | 屋内 8m×4m |
小型四輪 | 1m×2m | 6m×2.5m (うち屋内3m×2.5m) | 屋内 8m×4m |
小型三輪 | 1m×2m | 6m×2.5m (うち屋内3m×2.5m) | 屋内 8m×4m |
小型二輪 | ー | ー | 屋内 3.5m×3m |
軽自動車 | 2m×指定無し | 5.5m×2m (うち屋内4m×2m) | 屋内 5m×3.5m |
電子制御装置整備を行う作業場は「水平」であることが理想ですが、完成検査場以外の整備工場で、完全な水平とスペースを確保するのは難しいのが現状です。そのため、要件では「平滑」であることが求められています。したがって、作業場自体が水平でなくても、車両とターゲットを正対させて疑似的に水平な状態を確保すればエーミング作業を行うことができます。そのため、水平を確認するための水準器を保有していることが必須条件となっています。
必要な工具類
上記の水準器のほか、OBD接続が可能な整備用スキャンツールも必要です。スキャンツールの要件には、
少なくとも、一車種以上の車両において、排出ガス等発散防止装置、制動装置、かじ取り装置及び前方監視用カメラ、レーダー等を用いたセンシングシステムに対応し、整備に必要な機能として、DTCの読取・消去機能、前方監視用カメラ、レーダー等を用いたセンシングシステムの機能調整等を有すること
国土交通省 「電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習」資料
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001331469.pdf
のように定められています。
エーミング調整に必要なターゲットは認証の要件とはされていませんが、自動運行装置の点検・整備に必要な情報が入手できない事業場に対しては認証を与えられない旨の規定があるので、必要に応じてターゲットやサービスマニュアルを入手する手段を確保しておく必要があります。
一見するとハードルが高そうな電子制御装置整備ですが、要件が緩和されている項目もあります。例えば、整備用スキャンツールの2台目以降については、他の整備工場などと共同で保有することが認められているほか、整備に必要なスペースを確保できない場合には離れた作業場・設備の使用や、共同での使用も認められています。
自動運転システムを搭載し、電子制御装置整備が必要になる自動車はこれから急速に増加していくことが予想されます。新規事業はもちろん、事業拡大をご検討中の方もぜひ一度尾瀬ハウスにご相談ください。