「仕事で必要になったから、中型免許や大型免許を取りたい」
「キャリアアップのために、新しい資格として運転免許を考えている」
そのように考えている方に、ぜひ知っていただきたいのが「教育訓練給付金制度」です。この制度を活用すれば、国から給付金を受け取りながら、お得に運転免許を取得できます。
今回は、普通免許、中型免許、大型免許の取得を検討している方に向けて、教育訓練給付金制度の詳しい内容を解説します。ご自身の受給資格の確認方法から、具体的な申請の流れ、そして少し複雑な「特定一般教育訓練」と「一般教育訓練」の違いまで、分かりやすくご紹介。最後まで読めば、あなたもきっとこの制度を使って、賢くスキルアップへの第一歩を踏み出せるはずです。
※本記事の内容は2025年6月時点のものです。最新の情報は厚生労働省のサイトを確認してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
あなたは対象?まずは給付金の受給資格をチェック!
教育訓練給付金は、働く人のスキルアップやキャリア形成を支援するための国の制度です。そのため、利用するには一定の条件を満たしている必要があります。主な条件は「雇用保険にどれくらいの期間、加入していたか」という点です。
ご自身が対象になるかどうか、以下の2つのパターンで確認してみましょう。
初めて制度を利用する場合
以下の条件を両方満たしている必要があります。
- 条件1: 雇用保険の被保険者である(在職中の方)、または被保険者でなくなった日(離職日の翌日)から1年以内であること。
- 条件2: 雇用保険の被保険者であった期間が、通算で1年以上あること。
簡単に言うと、「正社員や契約社員などとして1年以上働いていて、現在もその仕事を続けているか、辞めてから1年以内」という方が対象になります。
過去に制度を利用したことがある場合
以前に教育訓練給付金を利用したことがある方は、前回の利用日から今回の受講開始日までに、雇用保険の被保険者期間が3年以上必要です。
「自分は条件を満たしているかな?」と不安な方は、お住まいの地域を管轄するハローワークで「支給要件照会」を行うのが最も確実です。ハローワークに備え付けの「教育訓練給付金支給要件照会票」に必要事項を記入し、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)と一緒に提出すれば、後日、回答書が交付されます。
普通・中型・大型免許はどの訓練?「特定一般教育訓練」と「一般教育訓練」
教育訓練給付制度には、訓練の内容に応じて「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3つの種類があります。このうち、運転免許の取得は主に「特定一般教育訓練」または「一般教育訓練」に該当します。
この2つの違いを理解しておくことが、制度をスムーズに利用するための重要なポイントです。
種類 | 給付率 | 上限額 | 主な対象訓練 | 事前手続き |
---|---|---|---|---|
特定一般教育訓練 | 受講費用の40% | 20万円 | 大型免許、中型免許、フォークリフトなど(速やかな再就職やキャリア形成に資するもの) | 必要 |
一般教育訓練 | 受講費用の20% | 10万円 | 普通免許など(雇用の安定・就職の促進に資するもの) | 不要 |
特定一般教育訓練とは
給付率が40%(上限20万円)と手厚いのが特徴です。主に、大型免許や中型免許、クレーン運転士、フォークリフトなど、取得することで速やかな再就職やキャリアアップに直結しやすい資格が対象となります。
最大の注意点は、受講を開始する1ヶ月前までに、ハローワークでの事前手続きが必須であることです。 この手続きを忘れると給付金を受け取れないため、計画的に準備を進める必要があります。
一般教育訓練とは
給付率は20%(上限10万円)です。普通免許の取得などがこちらに該当することが多いです。特定一般教育訓練に比べると給付率は低いですが、事前手続きが不要なため、比較的気軽に利用できるのがメリットです。
ご自身が取得したい免許がどちらの訓練に該当するかは、受講を希望する教習所が厚生労働大臣の指定を受けている講座によって決まります。 そのため、例えば大型免許でも一般教育訓練の給付しか受けられない場合もあります。まずは、後述する「講座検索システム」で、お近くの教習所がどの免許で、どの訓練の指定を受けているかを確認することから始めましょう。
免許取得までの具体的な流れ【5ステップ】
それでは、実際に制度を利用して免許を取得するまでの流れを、5つのステップに分けて見ていきましょう。特に「特定一般教育訓練」は事前手続きがあるので、注意してください。
Step 1:講座を探す
まずは、ご自身が通える範囲にある教習所が、給付金の対象となる講座を開設しているかを確認します。
- 「教育訓練給付制度 講座検索システム」にアクセス
厚生労働省のウェブサイトにある検索システムを利用します。 - 希望の免許で検索
「講座分野」の欄で「自動車運転免許」などを選択し、お住まいの地域を指定して検索します。 - 講座情報をチェック
検索結果一覧から、各教習所の講座詳細を確認します。ここで、取得したい免許が「特定一般教育訓練」と「一般教育訓練」のどちらに該当するのかを必ずチェックしましょう。
Step 2:ハローワークで事前手続き(※特定一般教育訓練の場合のみ)
「特定一般教育訓練」の講座を受ける場合は、このステップが必須です。
受講開始日の1ヶ月前までに、お住まいの地域を管轄するハローワークで以下の手続きを行います。
- 訓練前キャリアコンサルティングの受講
専門のキャリアコンサルタントと面談し、今回の免許取得が本当に自身のキャリアプランにとって適切かを相談します。 - ジョブ・カードの作成
キャリアコンサルティングを通じて、自身の職務経歴や学習計画をまとめた「ジョブ・カード」を作成します。 - 受給資格確認
作成したジョブ・カードなどをハローワークに提出し、受給資格の確認を受けます。
この手続きには時間がかかる場合があるため、教習所の入校申し込みと並行して、早めに動き出すことが大切です。
Step 3:教習所に入校・受講
ハローワークでの手続きが完了したら(または一般教育訓練で手続きが不要な場合)、教習所に申し込み、受講を開始します。
ここで非常に重要なのが、受講費用は一度、全額を自分で支払う必要があるという点です。給付金は、あくまで教習所を修了した後に支給される「後払い」の仕組みです。分割払いなどを利用する場合も、その手続きはご自身と教習所の間で行います。
Step 4:給付金の申請
無事に教習所を卒業し、免許を取得したら、いよいよ給付金の申請です。
申請は、教習所の修了日の翌日から起算して1ヶ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると申請できなくなるため、注意してください。
【申請に必要な主な書類】
- 教育訓練給付金支給申請書: 教習所の修了時に受け取ります。
- 教育訓練修了証明書: 教習所の修了時に受け取ります。
- 領収書: 教習所に支払った費用を証明する原本が必要です。
- 本人・住所確認書類: マイナンバーカード、運転免許証など。
- 雇用保険被保険者証
- 払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード
- (特定一般教育訓練の場合)ジョブ・カード
これらの書類を揃えて、ハローワークの窓口で申請手続きを行います。申請後、審査を経て、約1週間〜1ヶ月程度で指定した口座に給付金が振り込まれます。
Step 5:給付金の受給
指定した口座に給付金が振り込まれたら、すべての手続きは完了です。
見落としがち?知っておきたい3つの注意点
制度を最大限に活用するために、いくつか知っておきたい注意点があります。
- 対象は「厚生労働大臣が指定した講座」のみ
すべての教習所のすべての免許コースが対象ではありません。必ず「講座検索システム」で指定講座であることを確認してください。 - 給付金の対象外となる費用がある
検定料の再試験費用や、補習にかかった費用などは給付金の対象外となる場合があります。対象費用は、申し込み時に教習所へ確認しておくと安心です。 - 教育訓練支援給付金との違い
本コラムで解説しているのは「教育訓練給付金」です。離職者向けの「教育訓練支援給付金」(専門実践教育訓練が対象)とは別の制度ですので、混同しないようにしましょう。
教育訓練給付金制度は、少し手続きが複雑に感じられるかもしれません。しかし、特に給付率の高い「特定一般教育訓練」を利用すれば、数十万円かかることもある大型免許や中型免許の取得費用を大幅に抑えることができます。
この記事を参考に、ご自身が対象かどうかを確認し、計画的に準備を進めてみてください。国からの支援を賢く活用し、運転免許という新たなスキルを武器に、キャリアアップを目指しましょう。