前回の記事では、自動車整備工場で働くスタッフの採用について解説しました。
それでも、整備士が不足している状況ではなかなか人材を確保できないのも現実です。そこで、今回は外国人労働者の採用方法について解説します。
外国人技能実習制度の活用
外国人労働者を採用する方法の一つとして、外国人技能実習制度があります。 この制度は、日本の企業が海外の提携企業等で働く外国人を受け入れ、技術を教えながら働いてもらうことができる制度です。 自動車整備工場では、技能実習生として外国人労働者を受け入れることが一般的です。
技能実習生を受け入れるための要件
自動車分解整備事業の認証
技能実習生を受け入れるには、道路運送車両法第78条第1項の規定に基づき地方運輸局長から自動車分解整備事業の認証を受けた認証工場であることが必要です。したがって、認証工場でない場合は外国人労働者を受け入れることができません。認証工場を開業するために必要なものはこちらの記事をご覧ください。
また、二輪の小型自動車のみを対象とする場合や、業務範囲を限定した認証は受け入れの対象となりません。
技能実習指導員の要件
自動車整備工場が技能実習生を受け入れる場合、実習期間に応じて1号~3号に区分され、それぞれ受け入れ可能な業務範囲や求められる指導員の要件が異なります。受け入れには技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を選任する必要がありますが、特に技能実習指導員の要件は下記の通り厳しくなっています。
1号技能実習生(入国から1年間): 自動車点検整備作業が中心となります。 具体的には、法定点検に定める点検を自ら判断し、それに基づく整備の補助作業を行います。タイヤ交換やオイル交換など比較的簡単な作業を経験します。 指導員は、一級・二級自動車整備士、または三級自動車整備士で3年以上の実務経験があれば要件を満たします。
2号技能実習生(入国から2~3年目): 1号で習得した技能をベースに、自動車分解整備作業を行います。 かじ取り装置、制動装置、走行装置など、重要部品の点検・分解・整備を行い、各装置の点検手法や構造、使用する工具の取り扱いなどを学びます。 指導員の要件は1号と同じです。
3号技能実習生(入国から4~5年目): 1号・2号に加え、故障診断作業も習得します。 これまでの技能習熟状況を確認した上で、故障診断に必要な知識や技術を学び、最終的には自ら診断し整備できるようになることを目指します。 指導員は、一級自動車整備士、または二級自動車整備士で3年以上の実務経験が必要となります。
1号・2号のみの場合、合計3年間で帰国しなければなりません。3号まで受け入れることで、さらに2年間、高度な技術を習得させることができます。ただし、3号技能実習生まで受け入れるためには、一級または二級自動車整備士が在籍していることが必要になります。
技能実習生の受入れ人数
技能実習生は、常勤職員数に応じて受け入れられる人数が決められています。 また、技能実習生を受け入れることで自動車整備士の資格保有率に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
技能実習生を受け入れる際は、技能実習計画を作成する必要があります。 技能実習計画には、技能実習生に修得させる具体的な作業内容や指導体制等を記載します。 技能実習計画は、監理団体の指導のもと作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。
さらに、技能実習生が円滑に技能実習を進められるよう、日本語学習のサポートや、出身国の文化や習慣への配慮が重要であるほか、労働安全衛生法に基づいて技能実習生の安全と健康を確保するための対策も必要です。
今回は、外国人労働者の受け入れについて簡単に解説しました。実際に受け入れを検討する場合は、外国人技能実習機構や行政書士などの専門家に相談しましょう。