自動車整備工場を開業するためには、管轄する地方運輸局長の認可を受けなければなりません。(道路運送車両法第78条)
認可には以下の3種類があり、「自動車特定整備業」が最もハードルの低いものとなっています。
自動車特定整備業(旧:自動車分解整備業)
優良自動車整備業
指定自動車整備業
2020年4月に自動車特定整備事業制度が導入され「自動車分解整備業」の名称が変更されるとともに、レベル3以上の自動運転を行う自動車の「自動運行装置」が整備対象として追加されました。
許可を得るためには「作業場面積」「設備」「要員」の基準を満たす必要があります。
この記事では、申請に必要な「設備」と「作業場面積」にフォーカスして解説します。
事業内容によって必要な設備が異なる
従来の自動車分解整備業に含まれていた内容は次の7項目です。
- 原動機
- 動力伝達装置
- 走行装置
- かじ取り装置
- 制動装置
- 緩衝装置
- 連結装置
そして、2020年4月に以下の3項目が追加されました。
- 自動運行装置
- 衝突被害軽減制御装置
- 自動命令形操舵装置
どの装置を取り扱うかによって、認証に必要な設備が異なります。一般的には複数の装置を取り扱うことがほとんどですが、すべての装置を取り扱うためには指定された設備をすべてそろえる必要があります。
1.検車装置(リフト)
対象装置:連結装置を除くすべて
リフトは、車体を持ち上げて車体下部の点検・修理のほか、タイヤやサスペンション等の足回り部品を交換する際にも使用します。2柱式リフトやシザーリフトなど複数の種類があり、用途によって選択肢が異なります。リフトの選び方や設置の際の注意事項はこちらの記事で詳しく解説しています。
2.ジャッキ
対象装置:連結装置を除くすべて
ジャッキは、車両を一時的に持ち上げるために使用します。簡易的な作業であればリフトを使わずにジャッキで済ませることもできますが、作業をする場合は安全のために必ずリジッドジャッキ(ジャッキスタンド・ウマ)を併用する必要があります。
取り回し重視なら油圧ジャッキ、スピードとパワー重視ならエアージャッキがおすすめです。小型の油圧式パンタジャッキがあれば、サスペンション交換時にアームを支えたりすることもできます。
3.エアコンプレッサー
対象装置:すべて
エアコンプレッサーはタイヤの空気圧調整のほか、ジャッキやインパクトレンチなどのエアツールの動力源としても使用します。エアツールは圧縮空気の使用量が多いため、それに応じた能力・容量のエアコンプレッサーを選定する必要があります。タンク容量が小さいとすぐにコンプレッサーが作動し、振動や騒音の原因にもなります。コンプレッサーの能力が低いと、満タンまでに時間がかかり作業効率の低下に繋がります。近隣に住宅地がある場合は、トラブル防止のために低騒音型のものを選ぶことをおすすめします。
4.プレス
画像出典: マサダ製作所 デジタルカタログ https://masada-j.co.jp/d-catalog-s
対象装置:すべて
プレスは、主にベアリングやブッシュの圧入・圧出に使用されます。新品のアーム類はブッシュの圧入作業を取付時に行う必要があります。門型のプレス機が一般的ですが、どのような形状でも安全のために必ず保護メガネを着用しましょう。
5.トルクレンチ
対象装置:すべて
トルクレンチは自動車整備に必要不可欠な工具です。エンジンの組み上げからホイールの取付、アームやドライブシャフトの取付まで全てにおいて規定トルクを遵守しなければなりません。部位によって規定トルクは大きく異なるため、必要なトルクに合わせて複数本のトルクレンチを用意する必要があります。トルクレンチには可変トルク式と固定トルク式がありますが、設定ミスやズレを防ぐためには固定トルク式のトルクレンチを複数本用意することが有効です。また、トルクレンチは定期的な校正が必要です。購入時には校正証明書が付属しているもの・校正の対応が整備されているものを選定しましょう。
ここで紹介した以外にも、自動車整備工場を開業するために必要な設備があります。
詳細は国土交通省のホームページをご確認ください。
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/date/sikyoku_hp/pdf_common_seibi/seibi_01.pdf
さらに、屋内の作業場と車両置き場についても必要な面積や間口の寸法が定められています。複数の装置を取り扱う場合は、すべての要件を満たす必要があります。
例えば、乗用の普通自動車の全ての装置を取り扱う場合に必要な要件は以下の通りです。
屋内作業場 | 車両置場 | |||||
車両整備作業場 | 部品整備 | 点検作業場 | ||||
間口 | 奥行 | 作業場 | 間口 | 奥行 | 間口 | 奥行 |
4m以上 | 8m以上 | 8㎡以上 | 4m以上 | 8m以上 | 3m以上 | 5.5m以上 |
柱の間は有効な床面積として計上できないなどの制約があり、寸法ギリギリに設計していると、思わぬ形で不適合となってしまう場合もあります。
また、作業場の床面は当然平坦であることが求められますが、「水平」を出すことには技術が必要です。水平だと思っていた作業場が実は水平ではなかった場合、整備の制度に影響を及ぼすばかりでなく事故の原因にもなりかねません。
尾瀬ハウスは、自動車整備工場の建設に特化して全国で実績を重ねてきました。豊富な経験があるからこそできるアドバイスが必ずあります。
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